山ワインの豊かな多様性、アルト・アディジェ

左からナビゲーターの本多康志氏(セラリエ代表)、アルト・アディジェワイン委員会代表のアンドレアス・クロフラー氏、講師の中村僚我氏(銀座ロオジエ)

 

イタリア北部アルト・アディジェ。アルプス山脈の南麓に5,800haのブドウ畑が広がる。今年7月、アルト・アディジェワイン委員会代表のアンドレアス・クロフラー氏が来日し、この産地の魅力をひもとくセミナーが開かれた。

アルト・アディジェは標高200m~1,000mの山間にブドウ畑が広がる、一言で「山の産地」だ。ブドウ栽培業者は4,800あるが、一社あたりの畑の面積は1ha程度で、大多数が協同組合に加入して生計を立てている。98%のワインがDOCで、20種ものブドウ品種から多彩なワインが造られる。

2024年秋の収穫からUGA(追加地理的単位)が公式に認められた。これは生産地域を細分化し、各区画に適した品種の栽培を推奨するもの。DOCに付加して地区名と品種名を表記できる。UGAのワインは収量25%を減らして品質向上も図る。

「UGAに申請したのは86の地区で、うち20地区が認可された。多くは、伝統的にUGAと同じ考えに基づいてブドウ栽培が続いている地区だ。例えばピノ・ネーロだとマッソォーネ地区が知られている。だからどの品種をラベルに表記できるかは、UGAごとに決まる」と、クロフラー氏。

セミナーの講師を務めたのは、銀座ロオジエのソムリエ、中村僚我氏だ。2021年にアルト・アディジェのボルツァーノ大学大学院で栽培を学び、今年春に現地を再訪した。

「アルト・アディジェは盆地で、イタリアでも最も暑い地域の一つ。標高が高く、日較差が大きいエリアなので、ワインはテクスチャーに厚みがあり、それでいて、もぐもぐと噛み締めるような酸がある。そこに爽やかさを感じるのが特徴」と、中村氏。現地でとくに根付いているのはスキアーバの赤ワインで、「地元のどこのバルにもある。タンニンが控えめで、低めの温度で楽しまれている」と伝えた。

アルト・アディジェでは1970年代まで、生産の主流は赤ワインだった。1980年代後半から、赤から白へと徐々に移行していき、今では生産の65%が白ワインとなっている。「昔はどの畑もスキアーバだったが、今は適地適品種、高品質なワイン造りの研究が進んで、今はこの品種に合った地域でのみ栽培されている」と、クロフラー氏。

セミナー後半ではフードペアリングの講座が開かれ、リストランテ「メラキ」のマネージャーでセラリエ代表のソムリエ、本多康志氏がナビゲートした。

Wine-growing Estate Niedrist Ignaz, Alto Adige DOC Sauvignon Blanc Porphyr und Kalk 2021
アルト・アディジェによく見られる、肉厚で熟した柑橘のソーヴィニヨン・ブラン。供されたエビの厚味としっかり馴染む。魚のフリットやアスパラガスのリゾットなどとも。

St. Michael-Eppan Winery, Alto Adige DOC Pinot Bianco Sanct Valentin 2020
「グラン・ヴァンの風格」と本多氏。大樽で醸造したピノ・ビアンコで、フレッシュなライムの酸味、後味で心地よい苦味。塩っぽさや海苔の風味もあり、山芋の磯辺揚げとピッタリ。熟成ポテンシャルも高い。

Cantina Tramin, Alto Adige DOC Gewürztraminer Nussbaumer 2022
「ゲヴルツトラミネールは個性が強いため、料理も調味料どどのように使うか、工夫しがいのあるワイン」と本多氏。今回は、アジアン料理とのペアリングを考案し、サーモン、レタス、万能ネギ、ニラを使った生春巻きと。華やかな黄色い花、黄桃、コリアンダーシードのようなスパイスのニュアンスがあり、チリソースや魚盤を使ったエキゾチックな味付けに寄り添う。

Peter Zemmer, Alto Adige DOC Chardonnay Vigna Crivelli 2021
標高200m地点のシャルドネ。MLFをし、厚く、トロピカルフルーツの味。現地ではバターや乳製品を使った料理が多く、このようなシャルドネとよく合う。「根幹のミネラル感と酸がアルト・アディジェらしい」と本多氏。ペアリングはほうれん草とベーコンのリゾット。トンカツなどとも。

Franz Haas, Alto Adige DOC Pinot Nero 2022
「フランツ・ハースはピノ・ネーロのパイオニア」と中村氏。小樽で1年熟成、瓶内で数か月熟成。果実味が主体で土っぽさ、スモーキーなニュアンスもあり、カツオのタタキとマッチ。本多氏は「昔より抽出が控えめになって、ピュアな味わいになっている」と評した。

Kellerei Bozen, Alto Adige DOC Lagrein Riserva Taber 2021
品種はラグレイン。仏オーク樽で約1年熟成。スパイス香が顕著で、コーヒーのようなほろ苦さを伴うタンニンが特徴。ラグレインはタンニンがしっかりと強いため、ボリューミーな料理と。ペアリングはハンガリー帝国時代からの郷土料理「グーラーシュ レホールクリーム」(肉と野菜のシチュー)。

ゲヴルツトラミネールと合わせた、サーモン、レタス、万能ネギ、ニラを使った生春巻き

ラグレインと合わせたグーラーシュ。

 

 

(N. Miyata)

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