躍進するイングリッシュ・スパークリング、英国大使館で実力披露

近年、英国が高品質スパークリングワインの新興産地として注目を集めている。2024年10月15日、駐日英国大使館は大使公邸にてイングリッシュ・スパークリングワインの試飲セミナーを開催した。この日は3名の生産者が登壇し、ワイン産業の発展と展望について語った。

『WANDS 2024年11月&12月号』でも、大使館 農業アタッシェのカトリーン佐々木さんに、イングリッシュ・スパークリングワインを中心に英国産酒類の市場動向についてインタビューを掲載した。合わせて参照されたい。

発展の背景を、ハッティングレー・ヴァレーのセールス&マーケティングディレクター、クリス・アンガー氏が概説した。

「イギリスのワイン産業はまだ発展途上だ。1980年代後半にナイティンバーが先駆けとなって本格化し、その後急速な成長を遂げた。現在では栽培面積4,000ha、200以上のワイナリーを擁するまでに発展し、ワイン醸造は英国で最も成長の速い産業セクターの一つとなっている」。

英国は冷涼なワイン産地として知られるが、「近年は気候変動の影響で、2021年は記録的な低温、2022年は記録的な猛暑、2023年は記録的な大雨となった。2024年はこの3つがすべて起こった」とアンガー氏は説明する。それでも産業の基盤を着実に固め、海外からの投資も集まっている。現在は生産されるワインの70%がスパークリングで、シャンパーニュ品種が主に栽培されているが、「ハイブリッドやPIWI品種の導入も始まっている。今後さらに面白いワインが生まれるだろう」と同氏は展望を語った。

試飲セッションでは2名のソムリエが評価を述べた。マンダリンオリエンタル東京のシェフソムリエ、野坂昭彦氏と、東京エディション虎ノ門のヘッドソムリエ、矢田部匡且氏だ。

ケント州に本拠を置くバルフォアは2002年に創業した。栽培面積の70%をスパークリングワイン用に充てている。同社の「1503 クラシック キュヴェ」は「ピノ・ノワール、シャルドネ、ムニエがバランスよくブレンドされ、リンゴのコンフィ、ヘーゼルナッツの香り。厚みがありながら重たさを感じさせない。甲殻類やホタテのタルタルなどに」(矢田部氏)。

ハッティングレー・ヴァレーは2008年に創業した。ウィンチェスターを拠点に南東部の複数の畑からブドウを調達。すべてのワインに樽発酵のワインをブレンドし、2〜7年の熟成期間を経て出荷する。看板商品の「クラシック・レェルヴ ブリュット NV」は樽発酵ワインを50%ブレンド。「味わいは非常にドライで、きめ細やかな泡立ち。しっとりとエレガントで、ヌガーのような風味が印象的。非常にガストロノミックで、料理の始まりから締めくくりまで楽しめる汎用性の高さが魅力」(野坂氏)。

ロバック・エステーツは2013年に創業した。6つの畑を82の区画に分け、チョーク、グリーンサンド、粘土など多様な土壌を活かした醸造を行う。すべてのワインを最低3年瓶内熟成させ、100%ヴィンテージワインにこだわる。同社の「クラシック・キュヴェ 2018」はシャルドネ47%、ピノ・ムニエ42%、ピノ・ノワール11%。「黒ブドウ由来の艶のある外観で、りんごの蜜やアプリコット、ジンジャースパイスなど発展性のある香り。フレッシュな酸が持続し、長い余韻が楽しめる」(矢田部氏)。

日本市場での将来性について、野坂氏は「2011年に香港でナイティンバーと出会って以来、イギリスのスパークリングワインのポテンシャルの高さを確信している」と評価。矢田部氏も「年々、実力を感じている」と述べ、自身のホテルでは20種類ほどをオンリストしているという。

(N. Miyata)

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