- 2026-3-11
- スペイン Spain, 今月のWANDS
- ウニコ, ベガシシリア

「人の一生は、ワインを造るには短過ぎる」
当主パブロ・アルバレス氏が、スペインを代表する新聞「El País」のインタビュー(2018年1月)で語っている。
「このワインには、言葉を超えた何かがある。ブドウ畑があり、土壌があり、標高があり、過酷な気候がある。バルブエナの地の修道士たちがそれと付き合い始めてから800年。カスティーリャ地方のワイン造りの伝統だ。それからクローン選抜もあり、数千万ユーロ(数百億円)の投資もある。細心の注意を払い、何世代もの家族が同じ役割を担ってきた……。しかし、それだけではない。このワインは生きている。魂がある。ある日本人の識者が、そう教えてくれた」。
その日本人とは誰か、と知りたくはあるが、それより「言葉を超えた何か」とは何か。魂とは。それについて、パブロ氏に質問状を送ったところ、次のような回答があった。
「魂とは何か。簡単には説明できないが、ワイン以上の何かだ。ベガ・シシリアのブドウ畑は、160年間、同じ土壌、同じ気候で生き、生命をつないできた。この地域で唯一無二のものだ。そこに、ベガ・シシリアの個性、魂が宿る」。
「人の一生は短過ぎる、ワインを造るには。これが、私が41年間ベガ・シシリアに携わって学んだことだった。古い樹を抜いたら畑を5年休ませ、6年目に植え、さらに11年待つ。ここまでで16年だ。その上、『ウニコ』になるワインは10年熟成させる。合計26年。その頃になって、ブドウの樹はやっと成熟期に入る」。
「時間は必要不可欠だ。生き物を相手にしている以上近道はない。毎時、毎分、毎秒が欠かせない」。
「スペインの著名なシェフ、ダニ・ガルシアのもとで働いていたソムリエが言った。『ダニ・ガルシアでの初日、1921年のベガ・シシリアをサービスした。私は生命を感じた』。美しい言葉ではないか?」

ともすると「今」「一瞬」で答えを求めがちな現代人からすれば長いと感じる歳月であっても、ブドウとワインにとっては序盤に過ぎない。醸造長のゴンサロ・イトゥリアガ氏は、昨年の小誌のインタビューでこう語っている。
「ワインは人のように成長する。若者から円熟した大人へ。熟成中に、別の次元に到達する」。
「ベガ」とは、スペイン語で「川沿いの肥沃な低地」を意味する。ベガ・シシリアはドゥエロ川の氾濫原にある。アルバレス家所有40周年に出版された『The Mystery of Vega Sicilia』(2022年)の中で、栽培責任者のエンリケ・マシーアス氏は畑の地質をこう解説している。
「この一帯は、6,500万年前、淡水湖の底だった。畑では、恐竜が絶滅した時代の淡水アンモナイトが見つかる。風景全体が、かつて液体だった」。
その後、堆積した石灰岩が隆起し、陸地になった。ドゥエロ川が台地を削り、異なる地層を露出させた。今ブドウの樹が根を張る斜面の土壌の組成は、4万年前のものだ。
「浸食が生み出した複雑な土壌構造。白い粘土、活性石灰、淡水由来の極めて高いpHを持つローム質。一方、ブルゴーニュのロームは海水に由来する。同じ石灰質でも、化学組成はまるで別物だ。地球上の生命を拒むほど過酷な土壌だからこそ、時間をかけた扱いが不可欠になる。ブドウの樹は一本一本、60年から70年の生産寿命をかけて、この土地と折り合いをつけていく」。
ベガ・シシリアのワインが持つ複雑さは、この土壌に根ざしている。時間を重ねることで、その奥行きはさらに幾層にも深まる。その究極が「レセルバ・エスペシアル」だ。
「ウニコ」は、2万2,000ℓの大樽の中で5年をかけて熟成される。その間、醸造チームは年に一度静かにラッキングし、酸素を与え、また眠らせる。熟成の最終段階では、他のヴィンテージを極少量加えて複雑さを深める。そして、最良の「ウニコ」だけが選ばれ、異なるヴィンテージと組み合わされる。それが「レセルバ・エスペシアル」になる。
2026年リリース版は、2011年、2012年、2014年の「ウニコ」を組み合わせたものだ。3つの異なる年の記憶が、ひとつの瓶の中で重なり合う。
19世紀後半、フランスの醸造コンサルタントがスペインに「単一ヴィンテージ」という概念を持ち込んだ。そして20世紀後半の品質表示規制によりこの概念が定着すると、複数のヴィンテージをブレンドする伝統手法は、それまで誇りにしていたのにほぼ消滅した。その中で、ベガ・シシリアは最高峰のワインとして、この方法を守り続けてきた。ワイナリーは「レセルバ・エスペシアル」をこう定義している。
「年月の重なり、矜持、経験、そして情緒の混合物。その結実を味わっての驚きには終わりがない」。
ティム・アトキンMWは、リベラ・デル・ドゥエロの年次レポートで「レセルバ・エスペシアル」に繰り返し100点を与えている。最新の2026年リリース版は「年間最優秀赤ワイン」にも選出された。















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